エヴァンゲリオン日本人形フィギュア 吉徳×フリュー 開発者スペシャルインタビュー
エヴァンゲリオン日本人形フィギュア 吉徳×フリュー 開発者スペシャルインタビュー

Developer Interview
エヴァンゲリオン日本人形フィギュアを制作されたフリューKさん、吉徳Nさんに制作秘話を伺いました。
企画の経緯
――まず、エヴァンゲリオンのアスカとレイを日本人形フィギュアにしようと思ったきっかけを教えてください。
日本人形フィギュアをご購入いただくお客様と、エヴァンゲリオンのファン層がちょうど重なっていると思ったんです。さらに中国をはじめ世界的に人気の高いコンテンツでもある。それに、いつかエヴァの日本人形フィギュアを作りたいとずっと思っていたので、今回ようやく実現できた、という感じです(笑)。
――(笑)。しかも2025年がエヴァの30周年で、良いタイミングですよね。
そうなんですよ。「エヴァンゲリオンの周年をお祝いする」というのが根底にあります。着物を2枚重ねにして豪華な仕立てにしていたり、帯の柄に鶴などのおめでたい模様を使っているのも、すべてそこから来ているんです。おめでたい場に映える商品を、という意識が細部まで一貫しています。

――制作期間はどのくらいかかったんですか?
2年ぐらいかかったかもしれません。特にポーズの設計に時間をかけました。日本舞踊の動きを参考にしながら、アスカとレイそれぞれのキャラクターらしさをどう表現するか、何度も検討を重ねて。
――2年! 通常のフィギュアと比べてもかなり長いですね。
ポーズの方向性が固まるまでに何度かやりとりがありましたよね。その分、最終的な仕上がりへのこだわりも深くなったと思います。
着物の生地

――着物の生地はどのように決めていったんですか?
まずこういう系統の柄・色の生地が欲しいというイメージを吉徳さんに伝えて、候補をピックアップして持ってきてもらいます。その中から「この柄はいいけど色がちょっと違う」「この色を青に変えてほしい」といった調整をして、実際のサイズ感も確認しながら決めていく感じです。Photoshopで帯のサイズ感をシミュレーションして、「鶴の柄が20センチの袖に入りきるか」なんてことも確認しながら進めました。
人間が着る着物の生地をそのまま使っているので、お人形サイズにすると柄の一部分だけがピックアップされる形になるんです。なので、このお花が正面に来るように、この鶴の柄が正面に来るように……と、生地の「使い方」を選ぶところにもかなり気を使っています。柄が大きすぎてお人形に合わないこともよくあるので、そこも見極めながら進めます。
――人間が着る着物の生地をそのまま使っているからこそリアリティが出ているんですね…!柄のポジショニングも深く考え込まれていますね。色のベースはどこから取ったんですか?
プラグスーツです。アスカはオレンジ・赤・緑、レイは青・銀を軸に。ただレイは寒色でまとめすぎると静かすぎる印象になってしまうので、鶴の羽のサーモンピンクを差し色に使って華やかさを加えました。
そうですね。レイは瞳の赤とも連動させたかったので内側の襦袢は赤にしつつも、全体はレイの青っぽいイメージが前に出るように、という感じで選んでいきました。
――アスカの着物の内側がオレンジなのも印象的でした。
あれは結構悩んだんです。最初は外側と似た系統の生地を内側にも使っていたんですが、実際に重ねてみたら同じ生地に見えてしまって。せっかく2枚重ねにして豪華な仕立てにしているのに1枚に見えたら意味がないので、内側をがらっと変えることにしました。
プラグスーツのオレンジをヒントに、ビタミンカラー系にしてみたらというアイデアが出て。アスカがアニメで着ていた黄色いワンピースのイメージにも近くて、ビタミンカラーはアスカらしいよね、という話になりました。もともとピンクだった生地を指定のオレンジに染め直してもらって、今の形になりました。
実はアスカとレイの一番外側の着物の生地は全然違う生地に見えますが同じ生地なんです。同じ柄で色だけ変えていて、2人でお揃いの"リンクコーデ"になっています。同じ柄でつながりを持たせつつ、色が違うから別物に見える。しかも華やかでいい色だし、これはすぐ決まりましたね。
帯へのこだわり

――帯について聞かせてください。生地やデザインをどのように決めていったんですか?
今回は珍しく、着物からではなく帯から決まったんです。京都の生地屋さん・もりさんに直接足を運んでいろんな生地を見ていたんですが、A.T.フィールドに似た模様の帯にひと目惚れして、絶対にこれを使いたいと思いました(笑)。吉徳さんへの指定も、最初の段階からかなり具体的に伝えていました。大体の商品は着物の生地から決めていくんですが、エヴァに関しては帯が先でしたね。
――確かに模様がA.T.フィールドに似てますね!
そうなんです! これはたまたまA.T.フィールドみたいな柄があったっていう感じなんですけど。
亀甲っていう亀の甲羅に由来する古典の吉祥紋様なんですが、それがたまたまA.T.フィールドに似ていて。言われると本当にA.T.フィールドにしか見えないんですよね(笑)。アスカとレイで同じ柄を使いながら、アスカは赤×金、レイは青×銀と、それぞれのキャラクターカラーに染め直してもらいました。金と赤のパーセンテージと青と銀のパーセンテージを生地屋さんと相談しながら、どちらが多く見える方が印象的にまとまるかを細かく決めていきました。

――色の細かい調整をかなりされたんですね。
かなり悩みました。アスカは最初は結構シックな暗めの赤にしたんですが、意外とハマりが悪くて。明るい方に変えたらすごくよくなって。金の色味も黄色みが強い金にするか、落ち着いた金にするかでいくつかの候補があって、どの組み合わせがアスカに一番合うかをラリーしながら決めていきました。
アスカは帯の形にも結構悩みました。最初はしだれて長めの帯にしていたんですけど、レイの帯と対比させるためにも短い方にして結び方を変えようということになって、結構大胆に変えました。アスカはシャープに短くまとめて、レイは太鼓を合わせた丸みのあるフォルムにして横にボリュームを出すことで、縦に伸びたシルエット全体のバランスをとっています。
――帯一つでこんなにこだわりがあるとは……。
今回の帯は本当にすごかったです。他の商品でここまで帯に時間をかけることはあまりないかもしれないですね(笑)。イラストレーターさんによる元イラストがある場合はそれに忠実に合わせるのでわりとスムーズなんですが、今回は弊社内で描いたイラストを元に実物で自由に調整していったので、それだけ時間もかかったし、それだけこだわることができたと思っています。
ポーズ・造形のこだわり

――ポーズはどのように決めていったんですか?
まず版元様から可愛らしくオーソドックスにというご希望があったのですが、日本人形フィギュアはこれまで19商品展開してきたので、オーソドックスな立ちポーズにすると既存商品と被ってしまうんです。そこでオーソドックスさを保ちつつもオリジナリティのあるポーズを検討するために、着物を着た踊りの動画をいろいろ見ながら、動きの途中を切り取るように考えていきました。
舞踊の中でも、アスカとレイのキャラクターの対比を意識しました。アスカははつらつで「動」のイメージが強いので、着物としてはお行儀が悪いくらい足をしっかり開いた感じにして、袖や裾も動く感じにして、手首があえて見えるように。バサッという音が聞こえてくるような躍動感を目指しました。衣装原型制作はこれまでも日本人形フィギュアシリーズでご担当いただいている人形作家・宇山あゆみさんで、昭和30〜40年代のポーズ人形のコレクターでもある方です。こういう動きのあるタイプや着崩したデザインがすごく得意で、いつも美しく再現してくださいます。
――確かにアスカは風を感じるような躍動感あるポーズですよね。かなりグイッと後ろに反っていますし。

着物を着せると生地の厚みで動きが出にくくなるので、中途半端に曲げるだけだとまっすぐ立って見えてしまうんです。だから思い切って反らして。生地を内側に入れたり動きを固定したりすることで、動いているように見える仕上げにしています。
正面から足が見えるくらい裾をはらわせたくて、着付けの時には無理やり引き付けてもらいました(笑)。体が後ろに傾いているので、どこを正面とするか、どこまで裾を出すかという点も結構悩みながら作りました。
――レイはどんなイメージでポージングしたんですか?

レイはすごく静かな印象を大事にしました。舞踊の中に袖を巻き付ける動きがあるんですが、左腕の袖を巻きつけて、手が隠れるような、いじらしさのあるポーズにしています。手首が見えるアスカと、手が隠れるレイ、という対照性が出るように意識しました。レイがほんの少し笑っているような表情とも合わさって、普段とは違うちょっと柔らかいレイが見えるといいなと思っています。
――造形でこだわったポイントも聞かせてください。

個人的に一番こだわったのは指の美しさです。綺麗なお姉さんの手を目指して(笑)。女性の指って少し反り気味になるんですよ。その指のしなやかな反りの感じを表現していて、フィギュアならではのファンタジーも少し入れながら。
――指にそんなこだわりがあるとは…そうすると傘の保持が大変なのではないですか?
その通りで、指の美しさを優先すると傘をしっかり握れないんです。親指と人差し指の間のU字の部分に乗せるような持ち方なので、固定するための構造をどうするか、角度の調整を何度も重ねました。
――顔の造形についてはいかがですか?
唇の凹凸の感じにこだわっています。1/7スケールだと顔が小さいので線をピッと引けば口に見えるんですが、1/4スケールだと顔が大きくなる分、造形を深く入れないと立体感が出ないんです。あと首の長さも調整していて、実際の人間の着物の生地を使っているので生地の分だけ首まわりが詰まって見えてしまう。ちょっと長くすることでちょうど綺麗に見えるバランスに調整しています。
レイの表情も悩みましたね。レイってあまり笑わないキャラクターなんですが、お祝いの商品なのでほんのり笑わせたくて。笑顔すぎてもファンのイメージから離れてしまうし、スッとしていたらお祝いの雰囲気が出ない。「優しく微笑む感じ」を目指して何度も調整しました。
着せ付けの秘密

――着せ付けの過程で、苦労したことや工夫したことを教えてください。
作家さんがいつもおっしゃるのは、フィギュアは尋常じゃなくスタイルがいいので、人間が着るように型紙を作ると変なシワが入ってしまうということです。ボディラインを綺麗に出すために型紙の形を調整したり、凹んでしまう部分に綿を詰めたりといった工夫をしています。人間だと着物を着せると胸がふっくらして自然に補正されるんですが、フィギュアは硬くてそれがないので、凹んだ部分に綿を詰めて調整することが毎回あります。
本物の着物と同じ厚みの生地を使っているので、小さいフィギュアに着せると縮尺的にはかなりの厚着になってしまうんです。1センチの生地が、1/4スケールでは実寸4センチ分の厚さに相当する。ダウンコートを着ているみたいになってしまうので、それを補正するために原型はかなり華奢に作っています。
――華奢に作りすぎると耐久性の面で問題が出てきそうですね。
そうなんです。細くしすぎると着付けの作業中に足首が折れてしまうので、強度と細さのギリギリのラインを攻めています。
足首はお届けする時もドキドキしますね(笑)。着せ付け中は生地をきゅっと巻き付けてボディラインに沿わせる作業があるので、その引っ張りの負荷がすべて足首の2点に集中するんです。細さと強度のせめぎ合いは毎回あります。
――そもそも、普通の日本人形とフィギュアへの着せ付けはどう違うんですか?
一般的な日本人形やお雛様は、針金の骨格があって、着物を着せてからポーズを作ります。まず着物ありきで、ポーズが後から決まるんです。でも日本人形フィギュアの場合は、ポーズが決まった原型に着せ付けるので、全然違うアプローチが必要です。脇が締まりすぎると生地が入らないとか、袖口が狭いとか、着せ付けに関する条件を原型の制作段階からお伝えしながら一緒に作っていく感じです。
フィギュアに直接着せ付けるこの技術は特許を取得しています。フィギュアのボディラインをそのまま活かして着物を着せられるのが、他にはない表現につながっていると思っています。ボディラインがしっかりある分、着物の収まりや美しさも全然違いますから。
お客様へ
――最後に、お客様へ一言お願いします。
ぜひ実物をご覧いただきたいです。フィギュアに本物の着物生地——友禅や金襴——を使った商品はなかなかありません。写真では伝わりきらない生地の質感や重なりの美しさが、実物にはあります。イベントや展示の機会があればぜひ足をお運びください。
エヴァンゲリオンの30周年をお祝いする特別な商品になりました。ファンの方にはもちろん、日本の伝統工芸としての美しさも感じていただける一品になったと思っています。ぜひお手に取っていただけたら嬉しいです。

